京都のさる高名なお寺での話。この住職が大阪国税局の税務調査を受け、3年間で2億円の所得の申告漏れを指摘され、過少申告加算税を含めて1億円の追徴税額を納付したという事件がありました。
高名なお寺ですから、住職ももちろん高僧です。頼まれて掛け軸などを書くことも多く、その場合には揮毫料を頂くこともあったようです。なにしろ高僧ですから、それなりの金額が包まれていたものと推定されます。高僧の弁によりますと、このお金は志納金と考えて以前から申告していなかったとのことです。もちろん、高僧のことですから不正に蓄財するとか遊興にあてるとかはなかったと思いますが、詳しいことは分かりません。
そこへ税務調査が入りました。この高僧、志納金を受け取った場合でも申告をしなければならないという決まりを知らなかったそうです。法律は、知らなかったからといって免れることはできない仕組みになっています。したがって、税務署の処分は適正なものとなります。
こういった場合、どうしたら良かったのでしょうか。もちろん、お寺への入金として処理すれば何もなかったのです。書をしたためて布教をはかることは大いにあり得ることだと思いますし、謝礼を受けても非課税の収入にできたと考えます。もっとも、そのお金を個人的に使ってしまえば給与所得課税がありますが、高僧ですからその辺は大丈夫だったでしょう。
平成23年2月17日 朝日新聞 |